遺伝的に異なった動物が示す多様な行動パターンを制御する遺伝的プログラミングを解明し、行動がどのような遺伝的変化により進化するか明らかにするために、行動遺伝学を進めてきた。これまでに、野生由来の12系統と一般的実験用系統3系統(Mishima Battery of Mouse Strains)を用いて様々な行動テストを行い、各マウス系統の行動パターンの解析を進めてきた。その結果、野生由来のマウス系統を用いることで実験用系統よりも容易に行動形質の差を見出すことができた。このような行動形質の違いをもたらす遺伝子を明らかにするために、遺伝学的解析を進めた。 野生マウス由来のKJR系統は高活動性であるのに対し、BLG2系統は低活動性を示す。この2つの系統を交配して得られたF1雑種は高活動性であることから、高い活動性は優性に遺伝することが予想された。このようなKJR系統の高活動性に関わる遺伝子座を解明する目的で、戻し交配によるN2個体群を用いたQTL解析を行った。その結果、KJR系統の高い自発運動性に関わる遺伝子は染色体の3番遠位部位に存在することが示され、Loco1と呼ぶことにした。更にこのLoco1と相互作用する遺伝子座を明らかにするために、N2個体群の中からKJR由来のLoco1遺伝子座を持つ個体を選抜し、更にQTL解析を行った。その結果、第17番染色体にLoco1と相互作用する遺伝子座が新たに見いだされ、Loco2と名付けた。このように、KJR系統のマウスが示す高い活動性は、Loco1とLoco2に存在する遺伝子が働く事により生じることが示された。現在はこれらの領域に存在する候補遺伝子の探索及び解析を進めている。
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