研究概要 |
流動下における赤血球の運動や変形動態を理論および実験の両面から解析するための基盤となる力学モデルの構築および光学的計測方法の確立を目指して研究を行い,以下の成果を得た. 1.赤血球膜の面内変形,曲げ,および面積変化に対する弾性特性を表すバネのネットワークを考え,エネルギ原理に基づいて定式化することにより,3次元的に自在に形状を変化し得る赤血球の力学モデルを構築した.この力学モデルを用いて,膨潤した球形の赤血球の体積を減少させた場合の形状変化について調べ,構築したモデルにより様々な赤血球の形状を表現することができることを示した. 2.二次元場における赤血球同士の接触問題に対して,ポテンシャル論に基づいた数理モデルを構築し,赤血球が凝集していく様子をコンピュータ・シュミレーションで再現できることを確認した. 3.顕微鏡下で赤血球にせん断流れを負荷する装置(レオスコープ)を試作し,せん断流れ下の赤血球の変形動態を高速度カメラで撮影できる計測システムを構築した. 4.回転粘度計による血液の粘度測定下における赤血球の変形や集合状態を動的散乱光を用いて計測する手法を確立するために,粘度計の底面から照射した光の全散乱光の時間相関関数が,回転盤の粗面からの散乱光の時間相関関数と媒質からの散乱光の時間相関関数の和で表されることを理論計算により示した.さらに,血液のモデルとしてラテックス懸濁液を用いた測定結果と解析結果とが一致することを確認した.これにより,回転粘度計内における粒子の集合状態を動的散乱光法により測定することが可能であることを明らかにした.
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