研究課題/領域番号 |
13480285
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村林 俊 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30200306)
|
研究分担者 |
岩淵 和也 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (20184898)
三田村 好矩 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70002110)
|
キーワード | 変動磁場 / 細胞膜形態 / 細胞膜の物質透過性 / 抗ガン剤 |
研究概要 |
前年度までの研究において、変動磁場が印加されることにより、細胞受容体の発現に影響を与えることが明らかとなった。すなわち、INF-γ刺激マクロファージにおいては、INF-γ受容体が増加し、ConA刺激リンパ球においては、短時間印加において増加し、長時間印加によってはむしろ減少した。変動磁場によって細胞膜に何らかの影響を与えていることより、本年度は電子顕微鏡による形態観測を行うとともに、細胞膜物質透過性に及ぼす効果を検証した。 用いた変動磁場は、ヘルムホルツコイルにより発生させ、最大磁場強度2.2mT、周波数50-150Hz、duty50%の矩形波であった。定法により調製した脾臓マウスリンパ球に変動磁場を20分間印加したところ、リンパ球表面が平滑化し、6時間印加によっては、起伏の大きな凸凹状態となり、磁場非印加の場合と比較し、顕著な相違が観測され、変動磁場が細胞膜に影響を与えることが明らかとなった。 変動磁場の物質透過性に及ぼす影響として、4種類の抗ガン剤(5FU、cisplatin、carboplatin、daunorubishin)を用いて実験を行った。対象細胞として、抗ガン剤のスクリーニング標準細胞である、A549、HCT116、ACHNを用いた。それぞれの組み合わせにおいて50Hzおよび150Hzの変動磁場を印加し、SRB法にて生存細胞数を測定し、生存率50%における薬剤濃度(Dm値)を算出した。5FU、cisplatin、carboplatinにおいては全く磁場効果はみられず、そのDm値に変化は無かった。一方、daunorubishin-A549系においては、有意な磁場効果がみられ、磁場印加によりDm値が減少し、薬剤効果が増強した。細胞内daunorubishin量を蛍光分光器によって測定したところ、daunorubishin取込み量が増加しており、その磁場効果は薬剤取込み増加作用に因ることが明らかとなった。daunorubishinは他の3種類の薬剤と較べ分子量が大きく、細胞膜透過性が低いものと考えられる。その549の膜透過性をより低下させることを目的とし、その培養において、confluent状態とした。その細胞は予想通りDm値が増加したが、変動磁場を印加したところ、より顕著な薬剤効能がみられた。 以上の実験より、変動磁場は受容体発現のみならず細胞膜形態およびその物質透過性にも顕著な影響を与えることが明らかとなった。
|