研究概要 |
本研究では,研究代表者がこれまで研究を続けてきたリン脂質ポリマー(MPCポリマー)を一成分とするポリマーアロイを、新しいバイオマテリアルとすることを目指し、その分子構造、組織構造あるいは表面構造の制御から生体に与える効果について明確に示すことを目的としている。本年度は以下の項目について研究し、成果を得た。(1)ポリマーアロイの構造制御:平成14年度の研究成果を基づき、より高い力学特性と成型加工性を持つポリマーアロイの構造を規定するとともに、MPCポリマーの分子設計を行った。さらに,ポリマー骨格と側鎖ホスホリルコリン基との立体的配置を考え、これらをつなぐスペーサー部分の構造をかえたMPCポリマー類縁体を合成した。この中から生化学的評価において、優れた生体適合性を示す表面を獲得する添加ポリマー構造を選択し、合成を繰り返した。ポリマーアロイとした際のホスホリルコリン基の分散状態を明確に制御できる調製条件を明確にすることができた。2)ポリマーアロイの生体適合性評価:これらの基礎的知見の集積後、生体組織との反応を、まず培養細胞を用いて検討した。従来の手法に基づき一般にバイオマテリアルの評価に利用されているL-929細胞の接着伸展を検討した。さらに細胞がマテリアルと接触することにより産生するサイトカイン量もELISA法にて調べ、生体適合性の尺度とした。その結果、表面のMPCユニットの量に伴い、細胞接着が明確に低下することが認められた。この効果が添加するMPCポリマー濃度が0.2wt%でも顕著に発現することがわかった。また,表面の生体組織との接触に伴う機械的な作用について、SPU/MPCポリマーアロイ系で解析を加えた。SPUでは細胞組織の破壊が認められたが、MPCポリマーの添加により、表面での潤滑性の向上に伴う、組織の剥離が見られた。
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