研究概要 |
本年度は,仮想ダイポールレイヤーによる時空間高精度脳機能マッピング実現のため,多チャンネル誘発脳波計測システムの構築と計算機シミュレーションによる検討を実施した. 128チャンネルディジタル脳波計および同チャンネルキャップ電極により,多チャンネル誘発脳波計測システムを構築した.このシステムにより,頭皮表面における聴覚刺激誘発電位記録の予備実験を実施した.同時に信号情報を含まず背景にある雑音情報だけを含むとされる前刺激誘発電位を脳波から切り出して雑音の時空間分布を計測できることを確認し,この雑音分布を用いた逆フィルタ(パラメトリック射影フィルタ)の設計を行った.次に,3次完デジタイザにより,被験者の頭部形状および電極位置を計測するシステムを構築した.アメリカ合衆国イリノイ大学シカゴ校においてシステム構築のための調査と実験の打合せを行った. また,計算機シミュレーションにより,時空間解析の可能性、特に瞬目アーチファクトの除去について検討した.背景雑音を考慮した空間逆フィルタを時空間に拡張し,時変性ノイズ,非定常脳電位分布に対応できるようにした.そして,背景雑音分布情報に加えて,瞬目アーチファクトの空間分布情報を考慮することによって,瞬目運動時に発生するスパイク状のアーチファクトを大幅に低減できることを示した.更に,射影フィルタからウイナーフィルタヘと拡張し,観測データから推定した信号分布情報を逆フィルタに積極的に取り入れることにより,本方法の適用範囲を広げることができる可能性を示した.
|