研究概要 |
仮想ダイポールレイヤーによる時空間高精度脳機能マッピング実現のため,昨年度構築した多チャンネル誘発脳波計測システムを用いて実際にヒトの脳波計測実験を行い,ダイポールイメージングの可能性について検討した.また,ダイポールイメージング逆問題に適する復元フィルタの構成および実現法について,引き続き計算機シミュレーションのもとで検討した. 128チャンネルディジタル脳波計および同チャンネルキャップ電極により構成される多チャンネル誘発脳波計測システムにより,視覚刺激誘発電位記録の実験を実施した.視覚刺激として左あるいは右半視野の格子点滅画面を用いて,健常な被験者1名の頭皮誘発電位を計測した.同時に信号情報を含まず背景雑音だけを含むとされる前刺激誘発電位を切り出して雑音の空間情報を計測した.この雑音情報を組み込んだパラメトリック射影フィルタにより,頭皮電位分布から等価ダイポール信号強度分布を推定する逆フィルタを構成した.シミュレーション結果と同様に,提案法によって後頭部第1視覚野に信号強度が局所化されて現れ,従来法に比べて復元能力が向上した. また,計算機シミュレーションにより,信号分布情報および雑音分布情報の推定法とそれらを組み込んだパラメトリックウイーナーフィルタのダイポールイメージング逆問題への適用を検討した.パラメトリック射影フィルタとの比較を行った結果,信号と雑音の相関が低い場合は射影フィルタが,相関が高い場合はウィーナーフィルタの方が,良好な復元精度を得ることができた.以上より,信号と雑音分布を考慮してフィルタを使い分けることにより,様々な信号源や様々な環境への適用が可能であり,更に時空間逆フィルタへの適用も可能であることが示された.
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