研究概要 |
脳内情報処理機構の解明や情緒活動の計測への応用を目指し,頭皮上で無侵襲計測された多チャンネル脳波電位から,脳内の時空間的電気活動を高分解能で推定し,脳機能解析の精度を改善することを目的とした.空間分解能を改善するために,仮想的に脳内にダイポール層を設置し,頭皮電位からこのダイポール層の強度を推定した.このとき,前誘発電位より雑音の時空間分布を推定し,この分布を取り入れた時空間フィルタを構築することによって,逆問題の推定精度を改善した. これまで,種々の信号源,種々の雑音分布を考慮した計算機シミュレーションにより,脳内高精度時空間分析の有効性を確認した.また,多チャンネル脳波計を用いて構築した誘発脳波マッピングシステムによって,実際に、VEP(視覚刺激誘発電位)分布を計測し,高精度マッピングの試験研究を実施した.今年度は,更に事象関連電位を対象とし,時空間解析の有効性を調査した.また,雑音情報に加えて信号の時空間情報も組み込んだ逆フィルタの構成についても検討した. (1)事象関連電位の解析 時空間脳機能イメージングの有効性を確認するため,事象関連電位を対象とし,提案法による解析を行った.事象関連電位は局在化された脳内賦活部位が時間とともに変化する.本研究では,雑音の時空間的振る舞いを考慮した逆フィルタを構成し適用することにより,実データに対してより有効に動作することを確認した.今後,加算平均を行っていない単一試行データへの適用が期待される. (2)信号と雑音の時空間情報を組み込んだ逆フィルタ さらに,復元精度を改善するため,これまでの雑音の時空間情報に加えて,信号の時空間情報も組み込んだ逆フィルタの可能性について検討した.信号の統計的情報は,頭皮で計測される脳波電位分布と雑音の共分散行列,および伝達関数より推定した.
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