生体反応を利用した新しい細胞センサー型キャピラリー・クロマトグラフィの開発と応用

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13480294
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 荒木 勉 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50136214)
• 研究分担者: 東野 義之 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40075023) ; 安井 武史 大阪大学, 基礎工学研究科, 助手 (70314408) ; 橋本 守 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (70237949) ; 近森 憲助 鳴門教育大学, 学校教育学部, 助教授 (40108874)
• キーワード: マイクロセンサ / 細胞センサ / キャピラリ電気泳動 / 蛍光 / 局所環境モニタリング / SHG光 / ゾウリムシ

研究概要

細胞の環境感知能力と光学的手法による情報・収集技法を併用した生物マイクロセンサーに関する研究を行っている。ここでは(1)キャピラリー電気泳動システムと細胞センサーを結合するもの、(2)遊泳する単一細胞の動きのパターンを解析するものについて研究を行うとともに、研究過程で得た知見や技術、あるいは購入機器を関連した研究に導入した。
(1)として、ミトコンドリアに吸着するローダミン123蛍光色素(R123)を指標にし、細胞呼吸と関連した活性を知る。酵母菌を長さ31cm,内径25μmのガラス管(キャピラリー)内の中央付近に付着させ、キャピラリー両端に5kVの直流電圧をかける。キャピラリーにクラックを入れ、クラック部とキャピラリー端に電界を加えることで細胞に高電界がかからぬようにした。サンプル槽に2mMの水銀イオン溶液を注入した場合とpH2.5の酸性溶液注入では蛍光上昇に時間差が生じた。これらの液によって細胞が反応を起こし、一時的に活性が上がって蛍光ピークができる。しかもキャピラリーの分離効果によって水銀と酸では到達時間が異なっている。以上の結果より、細胞をセンサーチップとした新しい電気泳動システムが実現可能であることがわかった。
(2)として、ゾウリムシ1個体の遊泳パターンを顕微鏡下でモニタ解析することを試みた。水銀イオン、ニッケルイオン、酸などで特有の遊泳パターン変化が見られ、適切なパターン閾値を決定すれば一滴の水試料であってもそこに含まれる有害物の有無の判定が可能になることが示唆された。これは簡便なマイクロ水質汚濁モニターに利用できる。
現在パルスレーザーによるキャピラリーのマイクロ加工を試みている。さらに細胞分子構造の変化に敏感な第二高調波光(SHG光)の導入を試み、SHG光応用に関する成果を発表した。また励起光源としての発光ダイオード(LED)の分光研究も平行して行い、この成果も発表した。

研究成果

• [文献書誌] 荒木勉, 後藤繁, 佐藤達也, 近森憲助: "ゾウリムシの遊泳と細胞蛍光を指標とした水質汚濁モニター試み"日本機械学会、関西支部第77期講演会、講演論文集. 1506 (2002)
• [文献書誌] T.Yasui, Y.Tohno, T.Araki, et al.: "Polarimetry of second-harmonic-generation light sensitive to orientation of tissue collagen"Proc. OWLS VII. 19 (2002)
• [文献書誌] T.Miyata, Y.Imamoto, T.Iwata, T.Araki: "Temporal emission characteristics of white light-emitting diodes for high-speed pulsed current"Proc. SPIE (ICO-19). 695-696 (2002)
• [文献書誌] K.Shimabayashi, T.Yasui, Y.Tohno, T.Araki: "Imaging of the polarized Second-Harmonic-Generation light distribution to determine the orientation of collagen molecules in tissue"Proc., BOPM 2002. 268-269 (2002)
• [文献書誌] T.Yasui, K.Shimabayashi, Y.Tohno.T.Araki: "Polarimetric imaging of SHG light for spatial distribution measurement of collagen orientation in biological tissue"Proc., CLEO/Pacific RIM 2003. (in press). (2003)