研究概要 |
[1]安定でクリーンなO2-発生源の開発 NADPH oxidaseの制御サブユニットP67の自己制御(マスキング)をはずした短縮型,67Nとp47あるいはracの融合型を遺伝子工学的に創製し,これらを用いてoxidase活性化能すなわちO_2^-産生能を調べた。 [67N-47N融合タンパク]67Nと47Nをつないだものでは,47N-67N,67N-47Nともに融合しないものと同等以上の活性が見られた。25℃での安定性は67N-47Nでよりすぐれており、融合しないものにくらべて8倍の安定性を示した(t1/2=290min).kineticsの検討から、67N-47Nは酵素complexへの結合力が強まっていること、またもうひとつの制御サブユニットであるracのcomplexへの結合を強めていることが明らかになった。さらに、酵素本体であるシトクロムb558をベシクルに取り込ませる際に脂質の組成を工夫すると、通常必要な活性化剤を入れないですでに活性化されていることを発見した。活性化剤としてはふつうSDSを使うので、これを入れなくて活性化できるという性質は、いずれ細胞へ応用しようという本プロジェクトにおいては、大きな利点であり進歩である。 [67N-rac融合タンパク]67Nとracの融合では、67N-racの順につないだものが、活性が良好で安定性も非融合の10倍近くに上昇した。kineticsの検討から67N-racにおいて、complexとの結合力がましていること、が明らかになった。一方、rac-67Nの順につないだものは、活性が15%程度しかなく、安定性も改善されなかった。また、67N-racにおいスペーサーを長くしたものは、安定化の効果がうすれることがわかった。これらの結果からoxidase complexの構造、特にシトクロムb558に対する制御サブユニットの位置関係を示すモデルを提唱した。 [さらに安定なcomplexの創出]上記2つの融合体の延長線上には3つともつないだ融合タンパクが理論的に考えられる。しかし、これはつねにN-末とC-末のあいだを結ぶ遺伝子工学の原理からして不可能である。そこで、これに代わる方法を試行錯誤した結果、racの代わりに永久活性型のrac変異体を使うことにより、67Nとracの間を非常に安定化できることを見い出した。そこで、これと先の67N-47Nとを組み合わせて酵素を再構成したところ、これまでのどの場合より安定なcomplexが得られた。この安定性は以後の細胞実験への使用するにたえるものである上、racを前もって活性化する必要がないというメリットが付け加えられた。 [2]かんたんな系をつかった模擬実験 細胞実験の際につかう96穴のプラスチックmicroplateに上記の安定化酵素のひとつを入れ、電子供与体NADPHを加えたところ、complexはただちにO_2^-を出し始め、その後持続した発生が1時間以上に亘って続いた。
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