研究概要 |
医療領域において、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製人工血管が知られている。しかしながら、PTFEは生体内でねじれによる阻血を生じることがしばしば臨床上の問題とされている。本課題では、PTFEをはじめとする含フッ素ポリマーが有する低強度の欠点を補うため、高強度の特性を有するアラミドと複合化した含フッ素ブロック共重合体を合成することによって、新規な人工血管用材料を創製することを目的とする。この目的に基づき、ブロック共重合体の合成、表面解析及び物性評価を主たる実験計画目標とした。 1)含フッ素ブロック共重合体の合成: まず、両末端にアミノ基を有する含フッ素芳香族モノマーを合成し、これと芳香族ジカルボン酸クロリドとを重縮合させ目的とするブロック共重合体の合成を行った[特願2002-252183、J.Polym.Sci.,Part A : Polym.Chem.,41,2840(2003)]。さらに、アラミド部分の鎖長を延伸したブロック共重合体の合成を2段階縮合法により行った(J.Polym.Sci.,Part A : Polym.Chem.,投稿中)。その結果、それぞれ数平均分子量が17,000および20,000以上の高分子量体を得ることに成功した。この共重合体をもとにキャスト法によりフィルム作成を試みた。均一な厚さのフィルムが得られたが、ひびが入りやすい等、十分な強度を有するものではなかった。 2)表面特性の解析、物性評価等: 表面解析や引張試験等の物性評価を計画していたが、合成およびフィルム作成に多くの時間を要したため、これらの評価には至らなかった。フッ素、アラミド各ブロックの配分調整により適度な強度を有する共重合体の合成は可能であると考えられ、その点を克服することにより、この高分子の人工血管用材料への発展も期待できる。
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