研究概要 |
フォトニック結晶で実現される大変小さな光の群速度(群速度異常),ならびに,多彩な分散関係による位相整合は,高調波発生や直交位相成分スクイージングなどの非線形光学過程に大きな増強効果をもたらすことが期待できる。このことを実証するために,2次の非線形感受率を有するLiNbO_3基板上にイオン交換法で非線形光導波路を作製した。さらに,光導波路上にフォトレジストの1次元,および,2次元周期パターンを形成することにより,スラブ型フォトニック結晶を作製した。この試料について,導波モードの分散関係の測定と第2高調波発生の特性評価を行った。他方,従来から大阪大学・信州大学と共同でマイクロ波領域のフォトニック結晶の性質と局在モードについて調べていた。試料作製は大阪大学が感光性エポキシ樹脂を原料として光造形法で行っていたが,この方法は大変適用範囲が広く,マイクロ波領域の3次元フラクタル構造の作製にも世界で初めて成功した。マイクロ波の反射・透過特性を測定すると,試料の構造と屈折率で決まる特定の周波数において反射率・透過率ともに極端に小さくなることから,大きな共振のQ値をもつ局在モードの生成が推測された。これを確かめるために,FDTD法(時間領域差分法)によるシミュレーションプログラムを作成して局在電磁モードの固有周波数,空間分布,および,Q値の解析を行った。最後に,これまでの研究の集大成として「フォトニック結晶入門」(森北出版)を出版した。
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