メソ多孔体を利用した新しい研究を進める上で、その構造を調べること、構造を決定・評価する手法を確立することが研究の出発点となる。我々は三次元シリカメソ多孔体MCM-48について、複数の方位の電子顕微鏡像のFourier回折図形から求めた消滅則をもとに空間群空間群(Ia3d)を決め、それをもとに抽出した結晶構造因子(振幅と位相)からFourier合成により実空間における静電ポテンシャル分布を求めた。また、新しいケージタイプの三次元シリカメソ多孔体(SBA-6、SBA-1、SBA-16)について同様に空間群を決定して静電ポテンシャル分布を求めた。さらにガス吸着実験から見積もった細孔体積をもとに、アモルファスシリカの壁と細孔を区別するしきい値を決定して、ケージの形、大きさ、ケージどうしのつながり方などを評価した。しかし、現在のところ、静電ポテンシャル分布を求めた後の構造評価は『ガス吸着実験から壁と細孔を区別するしきい値を決める』方法しかないため、ガス吸着データを得ることが困難な試料については、そのままでは構造評価をすることが出来ない。さらに、アモルファスシリカやアモルファスカーボンなどの第二相が存在すると、ガス吸着データの信頼性に問題が生じる。本年度は、ガス吸着実験の結果を用いずに、電子線結晶学の中で閉じた形で構造評価する方法について検討した。得られた結果とこれまでに求められているシリカメソ多孔体の結果と比較して、この取り扱いの妥当性や成立する近似の範囲に関して知見を得た。
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