研究概要 |
植物ホルモンの一つであるアブシジン酸(ABA)は、植物の乾燥・高塩といったストレスへの応答や種子の成熟・休眠性に重要な働きを担っているが、その生合成や作用機構に関する分子レベルでの研究はあまり進んでいなかった。初年度(平成13年度)の研究により、ABA生合成の最終段階の反応を触媒するシロイヌナズナアブシジンアルデヒド酸化酵素(AAO3)の時期・器官特異的な調節機構の一端が明らかにされたが、二年度(平成14年度)はさらに本酵素の遺伝子AAO3プロモーター下にレポーター遺伝子(GFP, GUS, LUC)をつないだコンストラクトを遺伝子導入したシロイヌナズナを用いて、植物体内での発現部位、及び、発現誘導に働くシスの領域を検討した。その結果、ABAO遺伝子の上流1kbp以内に乾燥応答、及びABAへの応答領域のあることが認められ、また、AAO3の発現は根の先端部や維管束、葉の葉肉細胞などに分布することが明らかになった。加えて、AAO3に対する特異抗体の作成に成功し、これを用いた免疫組織化学的解析から孔辺細胞それ自体にAAO3タンパク質が存在することも明らかになってきている。この孔辺細胞での分布は、RNAプローブを用いたin situハイブリダイゼーションでも確認できていることから、ABAが孔辺細胞内で合成される可能性を強く示唆するものである。さらに、本酵素の一つ上流に位置するSDR1をコードするABA2遺伝子の特定とその生理的役割について解析を進め、ABAの植物の成長と生育への関与という新しい発想の必要性を明らかにした。
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