砂漠化指標の開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13490025
• 研究機関: 東京都立大学
• 研究代表者: 篠田 雅人 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (30211957)
• 研究分担者: 田 少奮 日本大学, 文理学部, 助手 ; 恒川 篤史 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (60227452) ; 大山 修一 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (00322347)
• キーワード: 砂漠化 / 乾燥地域 / 植物生産力 / 植生指標 / カザフスタン / モンゴル / ニジェール

研究概要

本研究の目的は、「衛星・現場データを組み合わせた世界的な砂漠化の評価指標の開発」である。砂漠化指標としては「植物生産力(純一次生産力)」に基づく定量的な指標を用いる。これまで世界の砂漠化の評価については、国や地域ごとに評価の基準や尺度が異なるため、客観性・統一性を欠いているという問題点が指摘されてきた。この問題点の解決につながる、以下の4点の成果が得られた。
1.モンゴル、カザフスタンで得られた現場検証データをもとに、衛星データにより純一次生産力(NPP)を正確に見積もるモデルを完成させ、この手法を用いてアジア広域のNPPを推定した。モデルのなかで、'乾燥地域特有の水分ストレスを考慮するため、土壌水分の実測値を検証データとして用い、日々の降水量・気温を入力とする簡易水収支モデルを開発している。
2.気候条件から推定されるNPPの潜在値を筑後モデルから算出し、1で得られたNPP実測値とその潜在値の比を砂漠化指標として用いた。この砂漠化指標を用いて、客観的な砂漠化の評価が可能となり、最終成果物としてアジア地域の砂漠化評価地図を作成した。この地図と既存の土壌荒廃地図との比較を行った結果、両者の評価が一致する地域とそうでない地域が明らかとなり、不一致ヶ所については、今後、高空間解像度の解析をする必要性が指摘された。
3.NPPの季節変動をもたらす環境要因を調べるため、NPP自動観測システムとボーエン比法熱・水収支観測システムを、モンゴル、カザフスタンに設置している。これにより、NPPと水分ストレスの季節変化に有意な対応関係があることが明らかになった。
4.3年間に収集した現場・衛星観測データをとりまとめ、「砂漠化指標データベース」を構築した。

研究成果

• [文献書誌] Shinoda, M., Y.Yamaguchi: "Influence of soil moisture anomaly on temperature in the Sahel : A comparison between wet and dry decades."Journal of Hydrometeorology. 4・2. 437-447 (2003)
• [文献書誌] Morinaga, Y., S.Tian, M.Shinoda: "Winter snow anomaly and atmospheric circulation in Mongolia"International Journal of Climatology. 23・13. 1627-1634 (2003)
• [文献書誌] Shinoda.M., M.Nemoto, D.Erdenetsetseg: "Role of Soil Moisture Memory in Drought Processes over the Asian-African Arid Region."Proceedings of International Conference on High-Impact Weather and Climate : Understanding, Prediction and Socio-Economic Consequences. (In press). (2003)
• [文献書誌] 大山 修一: "ザンビアの焼畑農耕ブジミにおける農耕空間の多様性"エコソフィア. 12. 100-119 (2003)
• [文献書誌] 吉田幹雄, 小松由明, 鞠洪波, 恒川篤史: "中国内蒙古農村における干ばつが農民生活に及ぼす影響と干ばつに対する農民の対応"環境情報科学論文集. 17. 363-368 (2003)
• [文献書誌] Tsunekawa, A., B.Zhu, K.Abe, C.Saito, K.Takeuchi: "Modeling the production and uses of biological resources from the viewpoint of energy flow in a rural village in Sichuan, China"China Environmental Management. 32・1. 47-61 (2003)