昨年度整備した35.5GHz帯偏波散乱計システムを用いて、土壌を対象とした散乱実験を本格的に実施した。実験においては、散乱に影響を及ぼす重要な物理パラメータである土壌の表面粗さと体積含水量を人為的に変化させて、一定の入射角の条件の下でターンテーブルを回転させながら方位角方向に平均した受信電力を取得した。土壌の表面粗さは、昨年度整備したレーザ変位計を用いて精密に測定した。また、土壌の体積含水率は、土壌を乾燥させて、乾燥前後の重量を測定し、重量含水率を求め、体積含水率に換算した。土壌の体積含水量は、土壌の複素誘電率を大きく変化させ、その結果規格化散乱断面積の値に大きな影響を及ぼす。土壌の複素誘電率を精密に測定することは、規格化散乱断面積の実験値と理論値を比較するために不可欠となる。このため、今年度は、複素誘電率測定装置を整備して、35.5GHz帯の複素誘電率を体積含水率を変化させながら測定した。測定した受信電力よりレーダ方程式に基づいて、地表面の規格化散乱断面積のデータを算出した。このようにして、土壌の含水量と粗さを変化させながら入射角の関数として規格化散乱断面積の値を測定した。 実験では、規格化散乱断面積の入射角依存性を測定し、Integral Equation Model等の理論値と比較したが、比較的良い一致を示した。また入射角が10度の場合、規格化散乱断面積は、地表面の粗さにはあまり依存せず、含水率の増加に比例して増加するという結果が得られた。また、植生を対象とした散乱実験も予備的に開始した。 さらに、現在のホーンアンテナを2倍の開口径のレンズホーンアンテナに置き換えて、屋外実験にも耐える35.5GHz帯偏波散乱計システムに改修し、来年度実施予定の屋外実験に備えた。
|