研究課題
基盤研究(B)
将来の人工衛星搭載用ミリ波降雨レーダの降雨エコーに混入してくるグラウンドクラッタの影響を定量的に評価する基礎データを得るために、実験室レベルで地表面の規格化レーダ散乱断面積を測定するためのミリ波散乱計のシステム設計を行い、それに基づいてネットワークアナライザをベースとした35.5GHz帯のステップ周波数方式の偏波散乱計を開発した。地表面の散乱波は、地表面の粗さと土壌含水率によって散乱特性が変化するために、これらをパラメータとした散乱実験を実施するにあたり、土壌のサンプルを載せて360°回転可能なターンテーブルの製作を行った。また散乱計を設置する架台を整備した。架台は、高さが可変であると共に、散乱計から発射される電波の土壌への入射角が0°〜90°の範囲にわたり可変となるように設計されている。また、散乱計を制御し、送受信偏波を切り替えると共に、取得データを収集、処理、表示するための計算機とソフトウェアを整備した。被測定対象物である土壌の粗さを測定するためのレーザ変位計およびレーザ変位計設置用架台、土壌の複素誘電率測定装置と測定用のソフトウェアも整備した。土壌の体積含水率は、土壌を乾燥させて、乾燥前後の重量を測定し、重量含水率を求め、体積含水率に換算した。土壌の複素誘電率の測定は、体積含水率をパラメータとして測定した。複素誘電率測定の校用には、複素誘電率の値が既知のサファイアを用いた。土壌の散乱実験においては、規格化散乱断面積の入射角依存性を測定し、Integral Equation Model等の理論値と比較したが、比較的良い一致を示した。また入射角が10°の場合、規格化散乱断面積は、地表面の粗さにはあまり依存せず、含水率の増加に比例して増加するという結果が得られた。また、規格化散乱断面積の値を仮定して、将来の35.5GHz降雨レーダに及ぼすグラウンドクラッタの影響を計算機シミュレーションによって算出した。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
電子情報通信学会論文誌B J87-B
ページ: 883-892
The IEICE Transactions on Communications (Japanese Edition) Vol.J87-B, No.6