本研究は障害児教育における「音楽を活用した取り組み」をより効果的に行うことを目的として計画されたものである。「音楽を活用した取り組み」を理論的に計画し、さらにその教育効果について科学的に評価するためには、音楽が人間に及ぼす効果や影響について客観的に知る事が不可欠である。初年度は琉球大学内にまず脳波計を軸とした生理学的な指標全般の計測システムを整備した。2年目には学校現場や臨床場面での計測を可能とするために小型の計測機器を導入し、使用の可能性と有効性を検証している。また琉球大学内に整備した計測機器を用いて今年度も引き続き実験的検討を進め、特に健常者を対象とした基礎実験については終了している。この実験的検討から得られた所見として、音楽鑑賞時の脳波変動には、特に「心理的構え」の相違がきわめて大きな影響を与えていることが明らかとなった。今後は、昨年度から開発を進めているメロディやハーモニーの要素と深いかかわりをもつ「ピッチ」の要素をコントロールした対照刺激と「心理的構え」について重点的にデザインされた実験的検討を行うことによって、音楽鑑賞時に生じる意識変動の特異性について、今後さらに詳細な所見が得られるものと考えている。一方、混入雑音が多くみられる障害児からの生理学的指標に関わるデータの分析には、デジタル信号処理を応用したフィルタリングの手法を用いた検討を進めてきた。これまでに265次のFIRデジタルフィルタを用いた広域遮断型の特性が有効であることが明らかとなっている。
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