本研究は、企業不祥事・企業危機の早期回避システムを整備することを目的としている。 13年度は、企業不祥事の事例研究を行った。サンプルとして選んだ公開大規模会社からヒアリングを行った。また、株主代表訴訟事件の判例に現れた企業不祥事の事実関係を整理し類型化を試みた。 14年度は、引き続き、株主代表訴訟事件の判例の事実関係について、類型化を図りつつ、わが国で、企業不祥事が具体的にどのようにして行われているかを分析しつつある。 当初の14年度計画では、中立監査役制度の具体化を行う予定であった。しかし、東京で開催されたガバナンス研究会の全体研究会、個別研究会を通じて、従業員を巻き込んだ形で展開していくためには、大義名分となる明確な理論の確立が必要であり、その解決なくして、新たな制度を導入することは、困難であると指摘された。 そこで、当初の予定とは異なるが、森理論のより明確な深化に重点をおいて計画の軌道修正を行った。こうした計画の軌道修正は、申請時に予測されていなかった商法改正および社会的関心の変化という新たな状況に因るところも大きい。 そこで、主として、以下の諸点について、具体的な検討を行った。 その第一は、平成14年商法改正により、委員会等設置会社が導入された場合には、監査役制度が強制廃止されることに伴い、中立監査役構想では不十分となった。中立監査役でなく、委員会等設置会社では、企業内中立機関として構想されるべきとされた。 第二に、内部統制の制度化を受けて、内部統制組織と社内中立機関の関係について、具体的な検討を行った。 第三に、食品会社の不祥事に関連して、社会的に内部告発の仕組みの整備を求める動きが高まってきた。本研究の目的とする企業不祥事早期回避システムが、この内部告発の制度化とどのように関係するのか、について具体的な議論を行った。 第四に、社内中立機関を利用した従業員保護は、健全性確保の観点からだけでなく、効率性確保の上でも重要であることを明らかにし、より幅広い補完的システムとして、整備していくべきとされた。
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