研究概要 |
本研究参加者は相互に連絡を取り合いながら個票データのリスク評価の手法について検討を行った。特に昨年度まで研究が進められてきた母集団サイズインデックスの制約付きノンパラメトリック推定法について,現実的な大きさの母集団に対する推定を可能にするための簡便法を確立した。また,この方法では推定を安定させるために母集団サイズインデックスに対して制約条件を置いたが,その代わりにZipfモデルや一般化Zipfモデルを利用する方法についても検討を行い,計算の更なる高速化を図った。これらの研究結果については日本統計学会(統計関連学会連合大会)やシンポジウム,研究会などで報告するとともに論文誌へも投稿中で,一部は掲載が決定している。 労働力調査,家計調査,全国消費実態調査の官庁統計について,本研究単独で目的外申請を行うために昨年度から準備を進めてきた。現在は3統計とも総務省内で下審査の段階にある。特に家計調査と全国消費実態調査については,近く本申請ができるものと思われる。本年度は目的外申請が許可されることを想定して,調査事項の内で個人を特定するために利用される変数であるキー変数の選定や,個票データを公開する際にデータに含める調査事項の優先順位について議論を行った。また労働力調査の個票データの公開では,ローテーションサンプリングの情報を併せて公開することによりデータとしての利用価値を高めることが可能と考えられるが,疑似データを用いてその点に関する検討を行った。 本研究参加者以外の意見を取り入れるために,本研究のテーマに関して他の研究グループと共同で11月29,30日に統計数理研究所でシンポジウムを開催するとともに,内部的な研究会も開催した。また統計数理研究所の論文誌「統計数理」に個票データ開示関連の特集を組むことが決定し,本研究参加者も既に投稿したところである。
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