研究概要 |
労働力調査,家計調査,全国消費実態調査の目的外使用が本年度認められ,個票データとしての公開のリスク評価について検討を行った。労働力調査については13年分のデータを用い,リスクを表す指標である一意な個体数に季節変動があることが示されたが,これは短期間のデータについての検討では不十分なことを示している。また利用する超母集団モデルによって母集団寸法指標の推定結果に大きな違いがあることも明らかになったが,部分母集団の情報を用いることにより,その差を縮小する方法を提案した。補助的な検討として,ローテーションサンプリングの調査結果への影響についても検討を行った。通算調査回数によって異なる調査票を用いていたことの問題が指摘されたが,その検証には更なるフォローアップが必要である。家計調査については5年分,全国消費実態調査については1回分のデータについて,世帯に属する個人属性も考慮に入れて公開可能な個票データのひな形を示した。 リスク評価方法についての理論的な研究も進め,母集団寸法指標の制約付きノンパラメトリック推定では,寸法指標の探索方法などについて改善を図った。また制約条件として一般化Zipfモデルを用いる方法ではパラメータの追加についての検討を行った。 本年度,他の科学研究費補助金の研究グループや統計数理研究所の共同利用研究グループと共同で,論文誌「統計数理」に特集「個票開示問題の統計理論」を組んだ。本研究分担者の論文等も掲載されている。また上記のグループと共同で,2003年11月27日〜29日にシンポジウムを,2004年1月10日に研究会を開催し,同じ分野や周辺領域の研究者との意見交換を行った。統計関連学会連合大会などでも研究成果を公表している。
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