研究課題
初年度に当たる今年度は、本研究で開発すべき高感度ピクセル検出器の構成について、まず検討を行った。高い位置分解能と同時にシングルフォトンレベルの高感度を実現するために、電子管内部にピクセル化された半導体センサーを内蔵する、いわゆる電子打ち込み型を採用することとした。半導体センサーとしては高いノイズ特性が期待できるアバランシェフォトダイオード(APD)を応用する。ここで問題となるのは光センサーとして開発されたAPDでは、電子打ち込みで使われる光電面からの低エネルギー電子検出に対して適切な構造をしていない点である。APDの感光面表層の不感領域(電極等)が低エネルギー電子の通過を妨げ、高い検出効率が期待できない。そこでまず専用のAPDを開発することから着手することとした。開発に当たっては、各種の条件を変えたテストサンプルを作り、その半導体センサーとしての性能を評価することで、最適化を行う手法を取った。いくつかの構造についてはコンピュータによるシミュレーション等を行い、テストサンプルの構造をリーチスルータイプなどに絞り込んだ。本開発の応用ではAPDはピクセル分割化されている必要があり、そのためのR&Dも重要な課題である。テストサンプルではこれについても、4×4の分割タイプでいくつかの条件を設定し、ピクセル間の不感領域の大きさや相互のクロストークなどの評価を行った。できあがったテストサンプルの評価により、実用に堪える構造の分割APDの製造についてはめどがついた。またこの評価の過程で、ピクセルからの配線が大きなクロストークの要因になりうることが明らかとなり、次年度からの実用サイズのセンサー開発への課題となった。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)