研究課題
基盤研究(B)
ナノスケールの金属ドットはその作製過程によりバルクとは異なる特異な結晶構造を持つことがある。また、磁性・電気伝導などの物性はバルクとは異なり、ナノスケール物質特有の性質を示す。我々の研究では、分子線エピタキシ(MBE)によりナノスケールMnAsドットが閃亜鉛鉱型の結晶構造を示すことを初めて明らかにした。閃亜鉛鉱型の結晶構造のMnAsは、フェルミ準位で100%のスピン偏極度を持つハーフメタルとなりうることが第一原理計算により予想されていたが、通常の作製方法では閃亜鉛鉱型にならない。我々は、硫黄で終端化したGaAs表面に分子線エピタキシを用いてMnAsを成長することにより、閃亜鉛鉱型のナノスケールMnAsドットを作製することが出来ることを明らかにした。今回得られたナノスケールMnAsドットがハーフメタルであるかどうかは確認できていないが、ハーフメタルであれば、スピン注入デバイスなどのスピンエレクトロニクスデバイスについて最適の電極材料となりうる。また、その他にも有機金属化学の手法を用いてMnPtドットを作製することに成功した。有機金属化学の手法を取り入れることにより、ナノスケールの金属ドットを、簡便にサイズをコントロールして作製することが出来る。また、ナノスケールにすることにより新機能発現の可能性があるのではないかと考えて研究を行った。その結果、バルクでは反強磁性を示すMnPtが、ナノスケールのドットにすることにより強磁性を発現することを明らかにした。このように、本研究によりナノスケール物質がバルクと異なる構造・物性・電子構造を持つこと明らかにした。
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