研究概要 |
氷微粒子加速装置の開発のため,本年度は氷微粒子導入部の開発を行った.まず,氷微粒子の作成方法を確立するため,凝縮法による微粒子作成を試みた.水蒸気に飽和した-10℃の低温空気中に液体窒素温度に冷却した銅版を入れて,水蒸気を凝縮させる方法である.凝縮した氷微粒子はほぼ球形をしており,直径は約10μmである.この微粒子自体は数μmの結晶からなる多結晶体であることがわかった.微粒子は相互衝突により時間経過とともに微粒子集合体へと成長する.この集合体の成長速度やサイズを制御する方法を確立するため,銅版に対向する位置に電極を置き,銅版との間に高電場を与えることにした.対向する電極にはその表面に氷を貼り付け,温度は-10℃に保った.100V/cmを超える電場を与えると,氷を貼り付けた電極に氷微粒子の集合体が形成することがわかった.微粒子の成長速度は与えた電場に比例して大きくなる.また,強い電場を与えると微粒子集合体の形状は直線的になり,電場が弱いと横に広がった樹枝状となる.この氷微粒子集合体は電荷をもっているため,ある程度サイズが大きくなると電極から分離し静電加速されるようになる.粒子の初期加速特性を調べるため,微粒子集合体のサイズが約500μm前後の時の,電場と飛翔速度の関係を調べた.飛翔速度は顕微鏡下でのストロボビデオ撮影により飛翔粒子を撮影して行った.その結果,氷微粒子は電場と以下の様な関係を持つことがわかった.Vi=0.25(Vol/d)^∧0.9(m/s),ここでVi飛翔速度,Vol電位差,d電極間距離(d=2.5mm)である.このように本年度は氷微粒子の静電加速に必要な微粒子作成と初期加速の手法を確立することができた.
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