研究概要 |
広い速度範囲で氷微粒子及びその集合体を加速することができる静電加速器の開発を行なった。飛翔用の試料となる氷微粒子は凝縮法により作成した。これは水蒸気に飽和した-10℃の低温空気中に液体窒素温度の銅版を入れて,水蒸気を凝縮させる方法である.凝縮した氷微粒子はほぼ球形をしており,直径は約10μmである.微粒子集合体は、この凝縮場中に100V/cmを超える電場を与えることにより作成した。この氷微粒子集合体は電荷をもっているため,ある程度サイズが大きくなると電極から分離し静電加速されるようになる.この時の電位と速度の関係は150Vから3kVの範囲で次のように表された。V_i=0.25(V_<ol>/d)^<0.9>(m/s),ここでV_i飛翔速度,V_<ol>電位差,d電極間距離(d=2.5mm)である. 大気中では空気抵抗による減速が働くため氷微粒子加速装置に真空チャンバーを取り付け、減圧下での微粒子加速効率を調べた。また、加速部を伸長することにより、微粒子集合体にかかる加速度を減らし、加速中に構造が壊れないように工夫した。実験の結果、大気圧(1bar)下では1kV/mmの電場で、サイズ約500μmの氷微粒子集合体を20m/sまで破砕することなく飛ばすことに成功した。しかしながら、目標とする1km/sを超えるためには二桁大きな速度が必要である。0.1気圧に減圧した中で氷微粒子集合体を加速した結果、加速時間が0.5msec程度に長くなるとともに終端速度が3〜4倍速くなることがわかった。この結果を外押すると1kV/mmの電場で100m/sを超える速度が可能になると思われる。
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