研究概要 |
オマーン・オフィオライトでのポディフォーム・クロミタイトの分類と成因の解明,および白金族元素濃集との関連はほぼ明かとなった.ポデイフォーム・クロミタイト形成(マントルにおけるCrの濃集)のメカニズムの精密化のために多里-三坂かんらん岩体の若松鉱山周辺においてクロミタイト・ポッドのサイズと構成鉱物の組成の相関関係の有無を調べた.同岩体はハルツバーガイトが岩体を通してほぼ同一の性質を有しているため,クロミタイト形成において重要な変数である壁岩の組成が一定であるという利点がある.国内最大のポッドである七号鉱体はクロムスピネルがもっともCrに富んでいる(Cr#が高い)ことは判明したが明瞭な相関関係は見出せなかった.従って,資源上もっとも重要なポッドのサイズを支配する要因の解明は今後の問題として残った.また,軽微な蛇紋岩化を受けたオマーンのクロミタイトに,特徴的なOs-Ir-Ru酸化物が見い出された.これは初生的な硫化物(主としてRuの硫化物であるローライト)の変質により生成されたことが形状,産状から明らかになった.この酸化物のOs-Ir-Ru比は初生的な硫化物と変わらないことから,蛇紋岩化の条件(300℃程度以下?)ではこれらの白金族元素はほとんど移動しないことが判明した. ニュージーランド北島においてクロムスピネルに富むダナイトの捕獲岩が予察的に見い出された.西南日本弧と併せて,島弧下マントルでのクロムの濃集が確認されたことになる.
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