研究概要 |
ポディフォーム・クロミタイトの成因を一般的に理解するために,オマーン・オフィオライトにおいて我々が発見した最も層序的に浅所に形成されたポディフォーム・クロミタイトを詳しく検討した.このクロミタイトはいわゆる後期貫入岩体に属するダナイト中のペグマタイト的ガブロのネットワーク状の脈に伴って産する.このダナイト岩体はオフィオライト層序のガブロ最上部(等方性ガブロ)とシート状岩脈群にまたがって貫入している.通常のガブロがモホ遷移帯〜マントルに産することを考えると,上〜中部地殻に産する特異なものである.クロミタイは単斜輝石および斜長石をマトリックスとして含み,クロムスピネルは比較的細粒で自形である.この点では通常のポディフォーム・クロミタイトよりも層状クロミタイトに類似する.スピネルはフロゴパイト,パーガス閃石,斜方輝石の包有物に富む.スピネルのCr#は0.6前後,TiO_2、含有量は1wt%前後である.後期貫入岩体は周囲の岩石を取り込むことが普通であるので,ダナイト中にのみ認められるガブロ脈はダナイトを形成したクリスタル・マッシュに取り込まれて融解したマフィック岩塊に由来すると思われる.クロミウムはクリスタル・マッシュ中のメルトに由来すると思われる.すなわち,ここでも比較的分化した組成を有するガブロ・メルトとマッシュの未分化メルトとの混合が重要な役割を果たしていたことになる.この未分化メルト(クロマイト成分に飽和)と分化メルト(比較的シリカに富む)との混合こそがポディフォーム・クロミタイトの生成に共通の要素である.また,このクロミタイトのPGE分布パターンはオマーン・オフィオライトのモホ遷移帯中のものに一致しており同一の成因を示唆する.
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