高分子型デス・マーチン超原子価ヨウ素酸化剤の創製と展開

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13554028
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 東郷 秀雄 千葉大学, 理学部, 助教授 (60217461)
• 研究分担者: 海宝 龍夫 三井化学株式会社, 有機機能材料研究所, 主席研究員 ; 山口 健太郎 千葉大学, 分析センター, 助教授 (50159208)
• キーワード: 環境調和 / リサイクル / 高分子型超原子価ヨウ素酸化 / アルコール / ケトン / アルデヒド

研究概要

5配位型超原子価ヨウ素官能基をもつDess-Martin酸化剤は、有機合成、特に付加価値の高い天然物合成や薬理活性化合物合成のような精密有機合成において、水酸基のアルデヒド基あるいはケトン基への温和で、選択的及び効率的な酸化剤として、決まって利用される重要な酸化試剤である。しかしながら、爆発性が潜在するという致命的問題があるために、工業的利用はまったく不可能である。本研究では、5配位型超原子価ヨウ素官能基をポリスチレン側鎖に有する高分子リサイクル型Dess-Martin超原子価ヨウ素化合物の開発と展開にあり、その研究の一環として、ポリスチレン側鎖に3配位型超原子価ヨウ素官能基である(ジアセトキシ)ヨード基を有する高分子リサイクル型原子価ヨウ素化合物を用いて、触媒量のTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジンオキシラジカル)存在下、種々のアルコールの室温下での酸化反応を検討した結果、0,5等量のTEMPO存在下で、第1級アルコールからは対応するアルデヒドが、第2級アルコールからは対応するケトンが効率的に得られることを見い出した。これは、(ジアセトキシ)ヨード基を有する高分子リサイクル型原子価ヨウ素化合物が安全で取り扱いやすい再生再利用型試剤であることから、合成化学的に非常に有用である。今後、アルコール基質を糖化合物等にも広げ、その合成化学的汎用性を確立するとともに、高分子リサイクル型原子価ヨウ素酸化剤のデザイン向上も検討して行く。

研究成果

• [文献書誌] S.Abe, K.Sakuratani, H.Togo: "Novel Preparation and Reactivity of Poly[4-hydroxy(tosyloxy)iodo]styrene"Synlett. 22-24 (2001)
• [文献書誌] A.Ryokawa, H.Togo: "Synthetic Use of 1,1,2,2-Tetraphenyldisilane for the Preparation of Biaryls Through the Intramolecular Free Radical ipso-Substitution"Tetrahedron. 57. 5915-5921 (2001)
• [文献書誌] S.Abe, K.Sakuratani, H.Togo: "Synthetic Use of Poly[4-hydroxy(tosyloxy)iodo]styrenes"Journal of Organic Chemistry. 66. 6174-6177 (2001)
• [文献書誌] M.Katohgi, H.Togo: "Oxidatively Sonochemical Dealkylation of Various N-Alkylsulfon-amides to Free Sulfonamides and Aldehydes"Tetrahedron. 57. 7481-7486 (2001)
• [文献書誌] Hideo Togo, Masashi Katohgi: "Synthetic Uses of Organohypervalent Iodine Compounds Through Radical Pathways"Synlett. 565-581 (2001)
• [文献書誌] H.Togo, M.Sugi, K.Toyama: "1,1,2,2-Tetraphenyldisilane(TPDS)as a New Diversified Radical Reagent"Comptes Rendus de L'Academie des Sciences Serie IIc. 539-546 (2001)
• [文献書誌] 東郷秀雄: "有機フリーラジカルの化学"講談社サイエンティフィク. 187 (2001)