研究概要 |
5配位型超原子価ヨウ素官能基をもつDess-Martin酸化剤は、有機合成、特に付加価値の高い天然物合成や薬理活性化合物合成、あるいは機能材料化合物のような精密有機合成において、水酸基のアルデヒド基あるいはケトン基への温和で選択的及び効率的な酸化剤として、決まって利用される重要な酸化試剤である。しかしながら、爆発性が潜在するという致命的問題があるために、工業的あるいは医薬業的利用はまったく不可能である。本研究では、5配位型超原子価ヨウ素官能基をポリスチレン側鎖に有する高分子リサイクル型Dess-Martin超原子価ヨウ素化合物の開発と展開にあり、その研究の一環として、前年度に引続いて、ポリスチレン側鎖に3配位型超原子価ヨウ素官能基である(ジアセトキシ)ヨード基を有する高分子リサイクル型超原子価ヨウ素化合物を用いて、触媒量のTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジンオキシラジカル)存在下、種々のアルコールの室温下での酸化反応を検討した結果、アセトン中、0.2等量のTEMPO存在下で、第1級アルコールからは対応するアルデヒドが、第2級アルコールからは対応するケトンが高収率で得られることを見い出した。さらに、種々の基質に当反応を適用し、その一般性と汎用性、及びリサイクル性を確立した。これらの成果は国際的学術論文誌に発表した。今後、さらに3配位型及び5配位型の高分子リサイクル型超原子価ヨウ素酸化剤を設計合成し、アルコール以外の基質にも当酸化反応を適用して行く。
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