研究分担者 |
内田 達也 東京薬科大学, 生命科学部, 助教授 (30261548)
山口 央 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手
西沢 精一 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (40281969)
香川 康浩 東レリサーチセンター, 生物化学研究部, 主任研究員
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研究概要 |
核酸は生体を構成する重要な要素であると同時に種々の機能を有する物質としても利用可能である。本研究では,前年度合成したグアノシン誘導体の高次構造についてその構造と機能の関連を明確にすると共に実試料に適用しうる化学センサーとしての機能を開拓した。 グアノシンの五位の位置にカーボネート結合を介してピレニル基を導入した分子は分子内水素結合によりsyn配置をとり,アルカリ金属イオンがない状態で自己会合し,4量体が二つ重なった8量体を形成することを明らかにしてきたが,この高次会合体の構造を計算化学によりシミュレーションした。その結果,二つのピレニル基がface-to-faceの構造をとり,上下の4量体が反時計回りのキラル構造体を形成し,これらの構造が合計24本の水素結合で保持されていることが分かった。これらの特性は,蛍光、CD、NMRなどの実験データと合致することでも支持される。 グアノシン8量体ではHoogsteen型の塩基対が形成されているが,これにシチジンやグアノシンの誘導体を添加するとWatson-Crick型の塩基対形成によって8量体が解離することになる。この解離は8量体が示すピレン二量体の蛍光強度が弱くなりピレン単量体の蛍光強度が強くなるという光情報変換を誘起する。この蛍光特性とシトシンと同様の水素結合部位を有するクレアチニンとに着目した分析法の開発を試み。血清試料分析へ応用した。アセトニトリルにより除タンパクした試料を凍結乾燥し,グアノシン8量体が溶存するジクロルメタン溶液に懸濁させると二量体蛍光強度が減少し単量対蛍光強度が増大する。この蛍光強度変化による定量値は標準試料の分析値と合致した。クレアチニンは腎機能のバイオマーカーであり,従来の化学的分析法と酵素的分析法が実濃度より高めの分析値を与えるのに対し,本研究で開発した化学センサーではそれらの妨害を受けることがない特色を持つ。
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