研究課題
基盤研究(B)
近年、人類の生活を豊かにしてきた人工化学物質のうち、生態系にホルモンとして作用するもの(内分泌攪乱物質)があると判明し、環境ホルモン問題として日常生活に大きな問題を引き起こしている。環境ホルモン問題は地球規模の環境問題であり、従来の地域的な公害問題とは本質的に異なるもので、その対策が急務とされている。また環境中の存在濃度の測定は汚染状況を把握する手段として重要視されており、簡便かつ高感度な測定手法が求められている。このような状況の中、我々はテラヘルツ電磁波を用いて内分泌攪乱物質を検出・同定するシステムの開発を行った。前年度までに我々は、8つの永久磁石による磁気回路を用いた改良型超小型強磁界発生装置および超短パルスモード同期ファイバーレーザーを用いた高強度テラヘルツ電磁波発生源開発に成功し、これにより光源のサイズはA4サイズ程度にまで小さくなり簡便性は飛躍的に向上した。さらにこの光源に加え、近接場などの検出システムを確立するためにテラヘルツ領域における導波路の開発を行った。これまで、テラヘルツ領域におけるフレキシブルなファイバーは存在しなかった。しかし我々はテラヘルツ領域において比較的透過率の高いテフロンを用いたフォトニッククリスタルファイバーを作製することにより、この問題を解決した。前年度は実証実験として、擬似内分泌攪乱物質(ナフトール)のテラヘルツ電磁波の周波数帯における吸収スペクトルを測定し、高強度テラヘルツ電磁波を用いることにより、ナフトールの異性体の識別が可能であることを実証している。本年度は同様の測定系においてナフトールを温度変化させた場合のテラヘルツ透過スペクトルを測定した結果、1、4ナフトールの相転移を観測することに成功した。透過スペクトルには2つの特徴的な吸収ピークが観測され、210Kでの大きな変化が観測された。示差走査熱量法及びX線回析法によっても温度依存測定を行った結果、240K付近で一次相転移を観測した。
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