研究概要 |
本研究は,一般には流体機械に致命的損傷を与えるキャビテーション衝撃力を,キャビテーション噴流により制御してピーニングに有効利用するショットを使用しないピーニング,すなわちショットレス・ピーニングの実用化を目指して,ショットレス・ピーニング装置の試作,および最適加工条件の確立を目的とする。本年度は,ショットレス・ピーニング装置の試作および同装置のピーニング効果を実証するために以下の研究を実施した。 1.ショットレス・ピーニング装置の試作 キャビテーション噴流となる高速噴流とその周りに低速噴流を噴射することにより,水を満たした水槽を用いることなく,大気中に直接キャビテーション噴流を生成することに成功した。 2.ショットレス・ピーニング装置の衝撃力エネルギーの計測 試作したショットレス・ピーニング装置の加工能力を調べるために,アルミニウム製試験片を用いて壊食試験を行い,衝撃エネルギーとして質量損失を計量した。その結果,通常のウォータジェット(気中水噴流)や水槽中のキャビテーション噴流よりも,試作したショットレス・ピーニング装置の気中キャビテーション噴流の加工能力が最も大きいことが判明した。 3.ショットレス・ピーニング装置によるピーニング効果の実証 試作した装置により,合金工具鋼SKD61にショットレス・ピーニングを行い,その表面の残留応力を現有設備のX線回折式応力測定装置により計測した結果,材料表面に圧縮残留応力が導入でき,さらにショット・ピーニングよりもその値が大きいことが明らかになった。また表面粗さもショット・ピーニングに比べて極端に小さく,本ピーニングが機械材料の高強度化のための表面改質に最適であることがわかった。
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