研究概要 |
光学機器の小型軽量化,高画質化に伴って,光学系のキーパーツである非球面レンズの要求精度はますます高度化している.特に最近,従来のプラスチックレンズに代わりガラスレンズへの期待が高まっている.非球面ガラスレンズの製造法はガラスモールド法と直接加工法の2つに大別されるが,従来は前者にあっては金型を,後者にあってはレンズ本体をいずれもダイヤモンド砥石で研削後,研磨で鏡面加工をする工程がとられてきた.しかし研磨加工では形状加工精度が劣化しやすく,それを避けるためには修正研磨法などに依らざるを得ない.これが非球面レンズのコストを非常に高価にする大きな要因であった.そこで研究代表者らは工作物回転方向と研削方向が直交する従来の研削法に代わり両者が直交する「パラレル非球面研削法」を提案した.その結果,従来の非球面研削法に比べ,仕上面粗さを飛躍的に向上させることができた. パラレル非球面研削法は仕上面粗さが非常に優れているという長所を持つ反面,砥石断面の形状誤差が非球面形状に転写されるという欠点がある.この対策として,ダイヤモンド砥石のツルーイングの高精度化と同時に,加工面の機上測定に基づく補正研削法の採用が不可欠である.特にパラレル非球面研削法では,あたかもプランジ研削のように,加工断面の各点が砥石断面上の点と1対1対応し,1回の研削行程における砥石摩耗量はほとんど無視できる程度に小さいので,補正研削に適している.そこで本研究では,理想曲線に沿って運動する加工機のテーブル上に,高精度のスタイラス式変位計を取り付けた加工面機上測定器を試作した.この測定器を用いて,2回の補正研削を繰り返した結果,口径30mmの非球面ガラスレンズの研削で,当初0.15μmの形状誤差を0.09μmに改善することができた.
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