研究概要 |
本研究は,当研究室で提案している宇宙機器のための新しい潤滑法(トライボコーティング潤滑:摩擦支援型蒸着膜形成法)の転がり軸受への応用の可能性を明らかにし,実用システムへ展開することを目的として行った.その結果,トライボコーティング法は,転がり軸受の潤滑法として極めて有効であることを実証し,そのための最適成膜条件を実験的に明らかにした.これは,実用化のための重要な知見である. 2年間の主な研究成果は,以下の通りである. (1)インジウムのトライボコーティングを施した玉軸受は,0.002の実用可能な摩擦係数を与える. (2)その寿命は,2回の再トライボコーティングにより,10^7回まで持続させることが可能である. (3)総玉軸受構造は,保持樹を有する玉軸受構造より,トライボコーティング膜の長寿命が得られる. (4)被膜供給速度は,安定した低摩擦のための最適値が存在し,その値は,6-20nm/minである.これは潤滑材の加熱温度で1000-1070Kに相当し,真空環境下でインジウムを蒸発させることのできるぎりぎりの低い温度に相当する. (5)被膜供給膜厚は,安定した低摩擦のための最適値が存在し,その値は,約100-400nmである.この値は,スラスト荷重と被膜膜厚により決定される被膜に与えられる接触圧力が800-1400MPaに相当する.
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