研究課題/領域番号 |
13555039
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 潔 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 助教授 (10282675)
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研究分担者 |
阿部 啓子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (10151094)
加我 君孝 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80082238)
中尾 政之 東京大学, 大学院・工業系研究科, 教授 (90242007)
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キーワード | 聴性人工脳幹インプラント / 微小多点電極 / 誘発電位 / 電気刺激 / 独立成分解析 / 聴皮質 / 脳機能マッピング / 神経細胞モデル |
研究概要 |
生体の脳幹に多店電極を埋め込み、それを用いて脳幹を直接電気刺激し、聴覚信号を伝達する脳幹人工脳幹インプラントの動物モデルを構築した。同モデルで、ラットの聴皮質で聴覚性信号を計測するためと脳幹を電気刺激するために、それぞれ微小表面多点電極と微小微小剣山電極を開発した。さらに、表面電極で計測した聴覚性信号の多様性を、独立成分解析と神経細胞のモデル解析を用いて説明した。 多点微小表面電極は、皮質上から高空間分解能に聴覚性の誘発電位を計測する。同電極では、曲率があり脈動している脳表面に電極基板が密着できるように、柔らかいポリイミド・フィルムを基板に用いた。基板上には2mm角の計測部位に80μm角の計測点を69個配した。微小剣山電極は、1.3mm角の計測部位に400μm間隔で格子状に、16個の微小タングステン電極を有する。インプラントシステムの動物モデルには、聴皮質の神経反応計測のために前者を、蝸牛神経核を電気刺激するために後者を用いた。純音に誘発された聴皮質の反応は、音の周波数に応じて異なる場所が局在的に反応した。また、蝸牛神経核の電気刺激は、音刺激と同様な反応を聴皮質で誘発した。さらに、同核の吻側部・尾側部を刺激すると聴皮質の吻側部・尾背部がそれぞれ選択的に反応した。このように、この実験系は、音刺激と電気刺激の両方に対して、選択的・機能的な神経反応を計測できることから、インプラントシステムの動物モデルとして有用である。 皮質表面から計測できる聴覚性信号は、皮質の神経細胞のシナプス活動、発火活動、皮質外の神経活動など、多くの現象に起因する。そのため、同信号波形は多様性を示し、しばしばその解釈も難しい。そこで、皮質における複数の神経細胞の発火活動・シナプス活動が、どのように聴覚性信号に寄与しているかをモデル解析した。次に、聴皮質上で多点計測した信号に独立成分解析を適用し、その結果をモデル解析結果と比較・検証した。その結果から、聴覚性信号の多様性は、皮質の神経細胞の発火活動、シナプス活動、および皮質外の神経活動の3成分による寄与の大きさで説明できることを示した。
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