研究概要 |
本研究では,まず,動的出力変位誤差を検討するために,ヒンジ部に作用するモーメントを弾性変形復元モーメントと粘性減衰モーメントとの和として考え,ヒンジ部の形状寸法によらない等価ばね定数と粘性減衰係数を,実験によるヒンジの振動減衰波形の複数の振幅値から求め,それぞれ,(1.6〜1.9)×10^8(g・mm^<-1>・s^<-2>),および(2.4〜2.8)×10^4(g・mm^2・s^<-1>)であることを明らかにした.ついで,パンタグラフ機構の動的理論解析式を構築し,解析を行うとともに,出力節先端の動的変位誤差を実験により明らかにしている.つぎに,この2自由度パンタグラフ機構に,さらに二つの平行四辺形ループが加わるようにリンクを付加した新しいヒンジとリンクの一体化パンタグラフ機構を提案し,入力運動とは無関係に,出力節の姿勢が一定となるようにし,具体的に製作を行い,本パンタグラフ機構の出力節の姿勢が運動作業中においてほぼ一定となることを確認した.また,パンタグラフ機構の対偶部における大変形ヒンジが大変形した時に生じるトルクを,FEMにより解析し,ヒンジ部の角変位とトルクとの関係を明らかにしている.ついで,FEMを用いてパンタグラフ機構のモデル化を行い,モード特性を明らかにしている.つぎに,マルチボディシステム(以下MBSと呼ぶ)解析により,機構の静・動特性に関する理論解析を行い,FEMおよびMBSが,機構の静・動特性を解析する上で有用であることを確認している.具体的には,固有振動数およびモード形状を明らかにするとともに,大変形ヒンジ部の作用力とモーメントを明らかにし,異なる二つの入力変位に対して,出力点がコの字形の軌跡を描く際の出力点の静的および動的出力変位誤差を明らかにしている.
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