研究概要 |
燃料電池は反応ガスが流れるセパレータと電極・電解質一体成型体(MEA)より構成される。電池セルの薄型により,高出力密度を得るためにはMEAの厚さは0.1mm程度なので,カーボンセパレータの厚さを薄くすることが必要である。又カーボンセパレータを薄くすることはコスト削減にもつながるので,カーボンセパレータの強度を考慮し,極限の厚さに挑戦した。セパレータの厚みを従来の4mmから0.6mmに薄くし,ガスの流れるチャンネルの深さをガスの圧力損失を考慮し1mmから0.2mmとマイクロチャンネル化した。電池性能は従来並みの性能である0.5A/cm^2,0.6Vを得ることが出来た。しかしセパレータの厚さを薄くすると強度が低下するので、ボルトで多層セルを均一に締め付ける必要があり,シール構造をOリングとした。又ガス流路溝が狭くなるとカソード側で生成する水が凝縮し電極におけるガスの拡散を阻害するため,セパレータを撥水処理し水の排出を促進すると共にカソードガスの湿度を調整することにより最適な条件を明らかにした。特に電池電流密度が高くなるほど水の生成量は増加するので,流入カソードガスの湿度を下げることが有効であることが分かった。この結果を踏まえ4セル積層電池を組立て性能を評価した結果,電流密度0.4A/cm^2で2.5Vであった。出力密度に換算すると1.5kW/Lに相当し,内燃機関並の性能を得ることが出来た。 燃料系についてはkWクラスのメタノール改質装置について改質器での熱の供給を燃焼熱を直接利用するオートサーマル方式を検討し水素収率が高くCO濃度を10ppm以下にするガスの供給,温度条件,触媒量を明らかにした。一つの反応器内に水蒸気改質,熱交換器、CO選択酸化器を組み合わせ最適条件を明らかにした。 さらにkWクラスのメタノール燃料電池発電装置を組立てた。システムはメタノール供給系,メタノール改質系,空気供給系,熱交換器系,燃料電池,水の回収供給系、電力変換・制御系より構成され,システムとしての課題を明らかにするため試運転を開始した。
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