濡れ性の高い液体を満たした流路内に置かれたヒータの一端をパルス状に加熱すると、近接箇所の発泡が次々に誘発され(沸騰伝播現象という)、気泡は流路内を一方向に成長し、他端から消滅する。本研究は、このような沸騰伝播現象を利用するマイクロポンプを試作し、性能を確かめるとともに、関与する諸パラメータについて実証的検討を行い、実用化を図ることを目的として研究を行った。昨年度は、先ず、繰り返し加熱による温度上昇を許容範囲に保つことのできるヒータサイズ、基板材質などを、3次元放熱過程の数値シミュレーションにより調べた。また、沸騰伝播現象の温度依存性などを実験的に把握し、マイクロ流路内でヒータを繰返しパルス加熱して一方向への沸騰伝播現象の繰り返しによりキャピラリ管間に生じた液柱高さの差からポンプ作用を確認した。本年度は、実用化に必要な各技術課題についてさらに検討するとともに、流量測定によるポンプ性能の検討、作動液体としての水の適用可能性についての検証を行った。 1.伝播現象の生起する条件 一方向への伝播現象を引き起こすためのトリガー部の加熱条件、並びに伝播速度と温度、伝熱過程の関係を調べた。また、平滑な白金蒸着面を用いることにより、濡れ性の比較的悪い水においても伝播現象が生じることを明らかにした。 2.沸騰伝播現象の繰り返し許容周波数 沸騰伝播現象の繰り返しにおける再現性が維持できる最大許容周波数を、オープンプール条件下において調べ、最大で約70ヘルツまで可能であることを示した。また再現性の失われる主な原因はヒータの温度上昇よりも残存気泡からの発泡である可能性が高いことがわかった。 3.マイクロポンプにおける液輸送量の測定 マイクロ流路内における一方向への沸騰伝播現象の繰り返しによる液輸送量を、キャピラリ管内の液体メニスカスの移動距離から測定した。正味の流量を発生させないで左右キャピラリ管間に生じた液柱高さの差からポンプ能力を評価する場合よりも高い40ヘルツまでポンプ動作が可能であることを示した。
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