研究分担者 |
松本 毅 産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員
若林 英信 京都大学, 工学研究科, 助手 (00273467)
松本 充弘 京都大学, 工学研究科, 助教授 (10229578)
石井 順太郎 産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員
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研究概要 |
工業装置の実環境下にある表面は,実験室の清浄な光学鏡面とは異なり,ミクロにあらくなんらかの被膜で覆われている.また,表面加工プロセスでは,積極的に表面にミクロ形状を実現し被膜を成長させる.すなわち,表面性状は,実環境下であるいはプロセス下で時々刻々にも変化する.本研究は,分光学的なハード・ソフト手法によって,このような表面の熱ふく射特性を伝熱評価のために明らかにし,また,熱ふく射を用いる表面のミクロ性状診断法を開発することをめざすものである. 平成13年度には,本研究の主たる実験装置である広波長域高速ふく射スペクトル測定装置を完成し,その表面ふく射特性研究における有効性を示した.平成14年度には,この装置を基礎として,時々刻々に測定される表面の放射と反射のスペクトルを解析して,時々刻々の表面の温度・あらさ・被膜厚さなどを診断する方法のアルゴリズムを提案し,検証実験を行ってその性能を例証した.そのアルゴリズムの温度診断部は,表面状態の変化にともなう放射率変動の知見なしに温度を推定する強力なものである.また,表面のミクロ形状診断部は,鏡面反射に注目するとふく射の散乱反射性表面におけるrmsあらさが自己相関長さとは独立に推定できるというアイディアに基づくものである.この本研究の方法は,表面の温度・ミクロ性状の非接触インプロセス診断の強力な手法となりうる.本研究では,さらに,薄膜系では,その系から放射される熱ふく射にも干渉挙動が現れることを確認した.この点に注目すると,放射スペクトルの測定を通じて表面のミクロ性状が診断される可能性,あるいは特定の方向に特定の波長のふく射を放射する機能をもつふく射エネルギー源が開発される可能性が示唆される.
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