研究概要 |
本研究では家庭や会社で容易に使用できるデジタル聴診システムの開発を目指している。本年度では,電子聴診器で捕らえた聴診音を容易にコンピュータに取り込むためのハード部を試作した。また,取り込まれた聴診データを再生・波形表示できるコンピュータ診断支援ソフトウェアの開発も試みた。 具体的には,本研究で開発したデジタル聴診システムは大きく二つに分けられる。一つは電子聴診器とマイコンボードを主とした記録部,そして,もう一つは記録されたデータをコンピュータに送信するための送信部である。記録部において,まず電子聴診器のチェストピースで得た心音や呼吸音は聴診器に内蔵されるマイクロホンにより電気信号へ変換される。また同じく内蔵のアンプにより信号は増幅される。続いてマイコンボードにおいて更なる信号増幅・フィルタによるノイズ処理・AD変換によりコンピュータ内のハードディスクに記録される。送信部においては,マイコンのシリアルボードを利用してコンピュータヘの直接データ送信と無線による信号転送を二通り行える。無線通信を利用すると,記録部とコンピュータを結ぶケーブルが無く,被聴診者を拘束しない為に使いやすい装置を構成できる。さらに,コンピュータに転送された聴診音を再生・波形表示したり,被聴診者の症状をある程度診断したりすることのできる診断支援ソフトウェアを開発した。本デジタル聴診システムを用いることで,日常の聴診音を保存しデータベース化することより被聴診者は自身の体調の変遷を知ることができるし,大量のデータは聴診に熟れていない研修医にとっては聴診の訓練にもなり得る。 また,心臓疾患の一つである心臓弁膜症に注目し,臨床計測より症例データを集め,自動診断の為の心音解析を行っている。
|