研究概要 |
双極性パルスパワーを用いた高効率気体分解処理について,放電処理の原理およびその有用性の実証のために,2ヶ年の予定で研究を実施した。本年度は,研究初年度に行ったNOx処理実験の結果をふまえて,光学観測による放電処理プロセスの解明を試みた。 実験には初年度同様,気体放電処理容器の中心部に直径0.2mmのタングステン製内部電極を装着し,波高値60kV,200nsの双極性パルスおよびこれと等しい入力電力を持つ単極性パルスを印加した。また,気体処理室へはNOx(N_2希釈のNOガス)を流量2l/minで給気した。光学観測には,高速度カメラを用い,電極の軸上および横方向でのプラズマからの発光を撮影した。 基本的に,プラズマからの発光は,プラズマ中の電子とイオンの再結合や励起分子が基底状態へ遷移することで起こる。この光の強度は,電子・イオン・励起分子の密度が大きいほど強くなるため,光の強度が強い領域は等価的にラジカルの密度も高くなり,結果としてNOx処理が行われやすくなる。一連の観測結果から,1.電圧印加後,50nsから100nsまでの間にストリーマが外部電極に到達し,放電がガス処理室全体で起こった。 2.電圧印加後100ns以降は,放電光が減衰し,中心電極近傍でのみコロナ放電が観測された。 3.1および2より,パルス幅が50nsから100nsの電圧を印加する方法が最もエネルギー効率が高い。 4.双極性パルスの負極性部分では弱いコロナ放電が起こっている。そのため,負極性部部分でのNOx処理への寄与は明確には現れなかった。 今回の実験では,双極性パルスの負極性部分による電子の拡散効果が現れなかったため,当初予測していた結果が得られなかった。しかしながら,電源やパルス波形の最適化などを行い,双極性パルスによるNOx処理について再検討する必要があると考えられる。
|