| 研究概要 |
磁界の数値解析技術は,磁界分布を支配する方程式の離散化手法と,解析モデル内に存在する磁性材料のモデリング手法が融合されて,初めてその真価を発揮する.離散化手法に種々の工夫を凝らし,解析プログラムの高速化を図っても,磁性材料の磁気特性が適切に考慮されていなければ,得られる解の精度は低下し,機器の小形・高効率化設計のための十分な指針は得られない.そこで,電気・電子機器の主な磁気回路材料として用いられているけい素鋼板の磁気異方性(ベクトル磁気特性)を,二方向励磁型単板磁気試験器を用いて評価する標準的な方法を検討し,測定された結果を磁界解析に適用して,その妥当性を検証することが,本研究の目的である.
本年度は,昨年度得られた磁界解析法に関する成果を改良することによって,試作した磁界シミュレータの実用性を高めるとともに,当初の計画に沿った項目の検討を行った.
(1)ベクトル磁気特性の近似法の改良による磁界シミュレーションの高速化 昨年度の検討項目の1つとして,測定によって得られた誤差を有するデータを,CAD分野で使用されているBezier曲面を用いて平滑化する手法を検討した.しかしながら,多項式近似に起因して多大な計算時間を要したので,平面パッチによる線形近似を併用する方法を検討した.その結果,約2桁の高速化が可能であることを明らかになり,実用性を高めることができた.
(2)各種けい素鋼板のベクトル磁気特性測定 集合組織制御によって磁区配向を改善した最新の高配向性鋼板,直交する二方向が磁化容易方向となる特殊な特性の二方向性鋼板および回転機用の高級グレード無方向性鋼板などの二次元磁気特性を評価し,磁気異方性の程度を明らかにした.
(3)回転機および変圧器鉄芯内の磁束分布解析 上記の測定で特性が明らかになった新素材である二方向性鋼板を,回転機および変圧器鉄芯内の磁束分布解析に適用して,ビルディングファクタの向上による高効率化が可能であるという有益な指針を得た.
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