本研究は、顧客ニーズに即応して超短期間に半導体LSI製品を生み出すための半導体製造技術として不可欠なフォトリソグラフィ工程の革新を目指して、従来にない新規な気液混合型フォトレジスト短時間剥離技術を開発することを目的とする。 本年度は、80〜90℃の超純水と微量薬液からなる気液混合流体を大面積均一に噴射できる噴射ノズルを搭載したフォトレジスト剥離試作機の設計・製作を行った。さらに、製作した装置を使用してフォトレジストの剥離プロセス条件の検討を開始した。 開発した装置は、半導体LSI形成用シリコンウェーハまたはディスプレイデバイス形成用ガラス基板を枚様水平搬送し、気液混合噴射、リンス、乾燥プロセスを連続して行える装置であり、シリコンウェーハまたはガラス基板上に形成されたフォトレジスト層に対して、気液混合流体の噴霧速度、噴射量、基板移動速度、ノズル移動速度などのレジスト剥離プロセス条件を広範囲に設定できる仕様となっている。 この装置を用いて、まず広く使用されているノボラック系レジストについて剥離実験を行った。フォトレジスト剥離検討に先立ち、クリンルーム内にウェーハを曝した際に付着する有機物の分子量に着目してその付着挙動を明らかにし、フォトレジスト剥離実験を阻害する有機物付着の影響を取り除いた。その上で、気液混合レジスト剥離実験を広範囲に行い、気液混合流体によるフォトレジストの剥離メカニズムが膨潤と打力の相乗効果によることを明らかにした。さらに予定通り、実際の大規模集積回路配線パターン上に形成されたフォトレジストの剥離実験を開始した。 次年度には、フォトレジスト剥離装置の改良、最適化、様々なフォトレジストの剥離プロセスを検討し、現状のような酸素プラズマアッシングと大量の薬液洗浄を用いずに、しかも短時間でレジスト残渣物を完全に除去できる気液混合型フォトレジスト剥離技術の確立を目指す。
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