研究概要 |
超高密度磁性メモリーの最小構成単位は既にナノメートルサイズ領域に入ろうとしている.こうしたメモリーの性能やデータの長期保存性を予想し,更に性能向上を図っていくためには,最小構成単位であるナノ粒子一個一個の性質を定量的に把握しておくことが必要である.しかし,従来の測定技術の感度ではその測定は到底不可能であった.こうした状況の中,我々は昨年度までに,異常ホール効果を利用した高感度磁化測定技術を確立し,単一ナノ粒子の磁化検出に初めて成功した.本年度は,この計測技術を基に,将来の超高密度メモリー材料として有望視されるL1_0構造FePtなどのナノ粒子1個1個の磁化反転様式及び熱安定性を詳細に調べた.その結果,磁性材料の特性長(交換結合長)を凡その境にして,ナノ粒子の磁化反転様式は一斉⇔非一斉モードに変化することが明らかになった.この実験結果はマイクロマグネティクス理論の予測と一致し,粒子サイズを交換結合長以内に抑えれば,粒子の全スピンが平行性を保ちつつ一斉に振舞うことを示している.この一斉モード領域では,高密度メモリーに求められる特性(例えば高速スイッチングやデータの長期保存性など)を引き出しやすく,またシステムに適合した材料設計も容易という特徴がある.今回の実験と理論計算によれば,代表的メモリー材料であるCo基合金やFePtなどの場合,交換結合長は20〜40nm程度であるので,磁性ナノ粒子の集合体や規則配列格子で超高密度メモリーを構成する際には,最小単位をこのサイズよりも小さくすれば一斉モードの磁化挙動を実現できる. 以上,本研究を通して得られた知見に基づいて,0.4テラ及び1テラビット/平方インチという超高密度メモリーを実現できる磁性材料とディメンションを明確にした.
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