研究概要 |
本年度は,デバイスを作製するための装置の開発を行うとともに,固体磁気メモリに必須のスピントンネル接合の形成方法などについて下記の検討を行った。 (1) NiFe/Al2O3/NiFe/MnIrという構成のトンネル素子をメタルマスクを用いて作製した。メタルマスクの交換は真空中で行い,接合面積は100×100μmとした。Al層の酸化方法については,チャンバ内への0.1気圧の酸素の導入による自然酸化,Alターゲットを4Paの酸素中で順方向スパッタしたプラズマの直上にAl層を配置する方法の2つを試みた。その結果,自然酸化の場合には,十分な酸化層の形成ができなかったため,順方向スパッタについて,系統的に酸化条件を調べた。 (2) 酸化のための順方向スパッタパワーを50W,酸化時間を30秒に固定して,Al層厚を変化させて,トンネル抵抗変化率ΔMRを評価した。その結果,ΔMRは,Al層厚を1.6nmから薄くするにしたがって増加し,1.2nmで最大値11%を示した。これより薄いAl層厚では,均一な酸化層の形成ができないため,ΔMRがほとんどゼロとなった。 (3) スパッタパワー50W,Al層厚1.3nmに固定し,酸化時間を変化してΔMRを評価したところ,酸化時間38秒で,10%に達する変化が得られた。 (4) 低温12Kにおけるトンネル特性についても,測定をおこなったところ,ΔMRは,室温の測定値より2-3%増加し,最大で13%の値が得られた。この値は,NiFeにおいて理論的に予想されている値13%とほぼ一致しており,ここで得られ酸化条件がほぼ最適なものと考えられる。
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