研究概要 |
本年度は,デバイスを作製するための装置の開発を行うとともに,固体磁気メモリに必須のスピントンネル接合の形成方法,電流パルスによる熱磁気記録実験などについて下記の検討を行った. (1)Si基板上に下地層SiN(10nm)を成膜後,CuAl(20nm)/CoFeB(10nm)/Al-O(1.3-1.6nm)/CoFeB(3nm)/MnIr(20nm)/Al(50nm)という構成のトンネル素子をメタルマスクを用いて作製した.メタルマスクの交換は真空中で行い,接合面積は100×100μmとした.Al層の酸化方法については,Alターゲットを4Paの酸素中で順方向スパッタしたプラズマの直上にAl層を放置する方法で作製した.その結果、室温で10%前後の,12Kで12から19%の抵抗変化率が得られた.室温における変化率が小さいのは,MnIr層による交換異方性が不十分であるためで,今後,MnIr層の組成等を調整して,より大きな交換結合が得られるようにする必要がある. (2)熱酸化膜(SiO_2500nm)付きSi基板上にTbFeアモルファス合金膜細線をメタルマスクを用いて作製した.細線幅は100μmであるが,これを集束イオンビームにより500nmから2μmの幅の範囲で加工した.この細線に500Oeの磁界中で電流パルスを印加し,印加後の磁区形状を磁気力顕微鏡(MFM)により観察した.印加磁界500OeはTbFeの保磁力5kOeより十分小さいため,電流パルス印加前では磁区形状は端子部分と同じであるが,10^6A/cm^2電流パルスを印加することにより印加磁界方向に磁化を揃えることができることが分かった.今後,スイッチングに必要な電流密度,パルス幅の素子サイズ依存性について調べること,およびトンネル素子について同様の実験を行う必要がある.
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