研究概要 |
本年度は前年度までの研究に続き,スピントンネル接合形成方法の検討と電流パルスによる熱磁気記録実験を以下のように行った. 1)Si基板上に下地層SiN(10nm)を成膜後,CuAl(20nm)/CoFeB(10nm)/Al-O(1.3〜1.6nm)/CoFeB(3nm)/MnIr(20nm)/Al(50nm)という構成のトンネル素子をメタルマスクを用いて作製した。メタルマスクの交換は真空中で行い,接合面積は100×100μmとした.Alターゲット上で4Paの酸素ガスを用いたRF, DCマグネトロンプラスマを生成し,Al層の酸化を行った.Al層厚1.5nmの素子において,室温で25%の抵抗変化率が得られ,300℃の熱処理でも全くMR比の低下が見られないという良好な結果を獲た. 2)熱酸化膜付き(SiO_2 500nm)Si基板上にTbFeアモルファス合金膜を成膜し,これを集束イオンビームまたは光リソグラフィー法を用いて微小電流パスを作製し,この領域でのジュール熱による熱磁気記録を行った.集束イオンビーム法では500nm〓〜2μm〓,光リソグラフィー法では2μm〓〜3μm〓の素子を形成し,この領域に電流が集中するような電極パッドも形成している。微細加工に用いたTbFe膜の磁気特性は保磁力1.5kOe以上で角形比1となっていた.この微小素子に500Oeの磁界中で電流パルスを印加し,印加後の磁区形状を磁気力顕微鏡により磁化反転を観察した.その結果磁化反転に要する電流密度は素子サイズが小さくなるに従い減少し,2μm〓,1μπ〓,0.5μm〓の素子でそれぞれ4.0×10^6,2.5×10^6,1.3×10^6A/cm^2であった.この値はスピン注入磁化反転に必要な電流密度に比べかなり小さく,ジュール熱磁化反転が高密度MRAMの有効な磁化反転手法であることが明らかとなった.
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