(1)単電子トランジスタ構造中に数個の自然形成量子ドットを集積したトランジスタは、異なるドットの帯電効果が重なった電圧電流特性を示し、個々の量子ドットからの影響をはっきりと分離をすることは容易ではない。それに比べて多数の自然形成量子ドットを集積した単電子トランジスタ構造の方が個々の帯電効果が平均化されて単一ドットが集積されたトランジスタ動作をすることがわかった。 (2)量子細線トランジスタのチャンネル上の障壁中に単一量子ドットを埋めむことを試みた。(311)A基板を加工して(100)ファセット上に量子細線トランジスタが形成でき、細線上の障壁に選択的にInAs量子ドットが形成できることが判明した。 (3)(1)で得られた単電子特性を示す電流ピークはそれぞれ電子スピンに関して無選択な環境での量子ドットの帯電状態を表している。電子スピンの選択の自由度が得られると異なる特性があらわれることが予想され、このことを利用すると帯電中の電子のスピン状態が判別できるトランジスタ動作実現の可能性がある。これを実現するため、強磁性体電極から狭ギャップ半導体であるインジウム砒素にスピン注入することを試みた。この結果、約40%のスピン偏極率を有する鉄電極から約18%のスピン注入が可能であることがわかった。このことから、スピン制御が可能な単電子トランジスタを実現するための基盤技術を確立することができた。
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