研究概要 |
近年の情報の大容量化に伴い,高密度記録に関する研究はますます重要度を増していると言える.現在の高密度記録の主流である磁気記録は,近い将来,理論限界に達すると考えられており,それに代わる新たな高密度記録方式の開発が要求されている.そこで,本研究者らは強誘電体材料に着目し,記録媒体への応用に関する研究を行ってきた.強誘電体材料は,強磁性体と同様に,0,1の情報を分極の方向に対応させて保持することが可能である.しかも,分極壁の厚さが1単位格子層程度と非常に薄いという,高密度記録媒体としての応用に有利な特徴を有している. 更に,本研究者たちは強誘電体の局所的な分極の方向が純電気的に検出できる純国産技術,走査型非線形誘電率顕微鏡(Scanning Nonlinear Dielectric Microscope ; SNDM)を開発し,報告してきた.この顕微鏡の分解能は現在,サブナノスケールであることが確認されている.本顕微鏡プローブを強誘電体記録の再生用ピックアップに用いると現在の技術の中では最も高速にかつ最も小さな記録ビットの再生が可能である. そこで,SNDMを用いて,定比及び一致溶融組成のLiTaO_3及びPZT薄膜ににおける微小分極反転領域の生成・ナノドメインの時間反転特性,実記録再生システムの開発を行った. その結果,1.実記録密度で1.5Tbit/inch^2を越える記録に成功した.これは電気的に書き換え可能な記録再生方式としては世界最高密度である. 2.ナノ分極ドットの高速反転特性を調べ探針下でもナノセカンドオーダーの高速スイッチングが可能であることが明らかになった. 3.最後に一通りの記録再生が可能な強誘電体高密度データストレージシステムの試作も行い,より実用に近い強誘電体記録再生装置に必要な開発諸元を明らかにした.
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