研究概要 |
製造プラントにおいては,機器が24時間連続稼働している例が多く見受けられる.故障する機器によっては有害ガスの漏洩や爆発などの事故が誘発される危険性があり,周辺住民や作業員に対する安全の確保が大きな課題となる.我々はニューラルネットワークなどの知能的なシステムを用いて,複雑な信号処理を比較的容易に実現できる音響診断システムの開発に取り組んできた.その中で長期間にわたる安定した診断のためには,変化する環境にいかに適応するかが重要なポイントであると考えた. そこで,本研究では動的な環境に適応できる能力を持つ音響診断システムの開発を目的とした.具体的には,環境が変わったことによって未知の音が発生したときに,未知の音であることを認識すると共に,既に構築したモジュールを変更することなくその未知の音を正確に診断できる新たなモジュールを付加していくような「診断ネットワーク」を新たに提案し,その診断能力を詳細に評価することである.このような診断ネットワークを実現するために,ネットワークの構築・学習アルゴリズムを種々検討した.また,プラントなどの高騒音環境下でのガス漏洩音の検出を主な診断対象として,種々の設備機器のもとで配管からのガス漏れ音と暗騒音を収集した.大量に収集した音響データを用いて,診断ネットワークの構築・学習アルゴリズムの有効性を示した.また,より高精度な診断のためには,マイクで収集した音響データから診断に有効な特徴を抽出する必要がある.そこで,進化的計算手法による特徴抽出に関する基礎的な検討も行った.さらに,最近注目されている独立成分分析を漏洩音の特徴抽出に適用し,その有効性も確認した.
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