研究概要 |
干渉縞画像を画面に固定することにより,等価的に微小物体を追尾する方法において,物体面上に形成される縞パラメータを同定する精度を向上するために,二つの方法の検討を同時に進めた.第一はマイケルソン干渉光学系を内蔵した高倍率のリニク型顕微鏡に置き換えて,空間分解能を向上する検討,第二は画像ノイズの削減効果の向上と尾根線固定精度の向上の検討である.リニク方式については,既存の光学系の改造により,干渉縞の形成には成功したが,高倍率においては視野内において干渉強度分布を均一化することが困難であり,実効的には倍率の向上が期待できないことが判明した.そこで,第二の方法による浮動ヘッドのすきま測定における精度の向上に重点を移して,画像採取領域の最適化,尾根線間隔の外部同定法の導入,多層膜・多光束干渉による干渉シミュレーションによる位相補正法の導入などにより,三次元的挙動の測定精度の向上を実現した.結果を要約すると以下のとおりである.1)マイケルソン干渉光学系において,採取する縞本数が1本になるように調整し,また参照面を半波長相当分駆動することにより縞間隔を同定する縞間隔の外部同定法を導入して,すきま分解能0.83nmを実現した.2)気体潤滑膜、スライダ表面のDLC膜・Si膜,およびスライダの基材を光学的多層膜とするモデルを用いて,多光束干渉シミュレーションを行い,観測された光学的すきまから,シミュレーションで得られた位相の回転量を補正することによって,DLC膜表面とガラスディスクとのすきまを求める手順を示した.3)実用されている浮動ヘッドスライダを用いてすきま測定実験を行い,浮上シミュレーション結果と比較した.実測したすきまは浮上シミュレーション結果とよく一致した.また測定値のばらつきの最大値4nm,標準偏差0.6nmであり,実用上十分に高い再現性が得られることを確認した.
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